Flower+1<お花のふるさとと知られざる魅力>

VOL.5 佐賀「明日香園」の地上の珊瑚のようなケイトウ

陽射しと潮風が気持ちいい、有明海沿岸の町へ

長崎県との県境に位置する。目の前には有明海、背後には標高1000mの多良岳と、豊かな自然に囲まれたこの地に明日香園はあります。

「有明海沿岸は一年を通して晴天率が高く、特に冬場の日照時間が長いんです。海からの潮風と清らかな地下水にも恵まれているので、花の栽培には最適な気候なんですよ」。
そう教えてくれたのは、代表取締役を務める山口秀行さん。標高100mほどの丘の上にあるハウスに案内していただくと、目線の先にきらきらと光る有明海が広がります。訪れたのは真夏でしたが、山間を通り抜ける風が肌に心地よく感じました。

珊瑚のような花姿のオリジナル品種を育てています

明日香園では45年前からみかんとともに花の栽培を始め、25年前から花専業に。現在は冬から春にかけてユリを、そして4月下旬~12月まではケイトウを出荷しています。

代名詞ともいえるケイトウは、扇型のボンベイケイトウ、丸い頭の久留米ケイトウ、シュッと尖ったヤリケイトウなど20種類以上を栽培。「なかでも力を入れているのがボンベイケイトウです。インドにルーツを持つ品種で日本では育てるのが難しいのですが、品種改良にチャレンジし、オリジナル品種の育種に成功しました」。山口さんらが育てたオリジナル品種は「アスカセレクト」と名付けられ、ジャパンフラワーセレクションをはじめ、数々の受賞歴を誇ります。
そのアスカセレクトが栽培されているハウスに足を踏み入れると、海の珊瑚にも似た美しい花姿が目に飛び込んできました。ハウスの中で色とりどりの花が咲き誇る様子は、まるで南の島の珊瑚礁のようです。

美しい色や光沢はもちろん、品質にも自信があります

明日香園のボンベイケイトウの特色のひとつは、美しい発色にあります。赤とピンクの中間の「ボンベイレッド」、白とグリーンの中間の「スワプナ」、やさしいピンクの「ラビリンス」など、微妙な色合いが魅力で、アスカセレクトだけで虹色のグラデーションができるほどカラーバリエーションも豊富。ビロードのような光沢も高級感があり、合わせる花もぐっと引き立ててくれます。

また品質にもこだわり、とりわけ花首や茎の安定感に定評があります。その秘訣は品種改良に加え、栽培技術にもあるとのこと。「栽培で重視しているのは土づくり。有機・減農薬栽培で、花にも人にもやさしい農法を心がけています。また水やりの方法にも工夫を凝らすことで、日持ちのする花ができるようになりました」と山口さん。

上からだけでなく、側面から見ても美しい明日香園のケイトウたち。その背景にはこんなたゆまぬ努力があるのですね。

茎の長さを変えることで2通りのイメージに

ケイトウというと、ほっこり温かみのある花姿が印象的ですが、まっすぐにすっと伸びた茎も魅力のひとつ。届いたばかりの頃は茎の長さを生かし、秋の枝ものや実ものと一緒に飾るとモダンでスタイリッシュなイメージになります。切り戻しで茎が短くなってきたら、次は頭を揃えて生けてみましょう。

ケイトウならではのカラフルな色合いや温かみが引き立つ、素朴でかわいらしいアレンジが楽しめます。

残暑が厳しい時期でも長く楽しめるのが魅力

ビロードや毛糸のような質感から秋のイメージが強いケイトウですが、実は暑さにとても強いのが特徴。明日香園のものは特に日持ちがいいので、直射日光や冷房の風が直接当たる場所を避ければ、まだまだ暑さの続くこの時期でも長く楽しめます。ただし茎がぬめりやすいため、こまめに切り戻すことと、水をきれいに保つことを忘れずに。

協力: OZmagazine[スターツ出版(株)]