FLOWER+1<お花のふるさとと知られざる魅力>

VOL.11 静岡「やぎバラ育種農園」のオリジナルバラ

見たことのない個性豊かなバラを求めて菊川市へ

幾重にも重なった花弁、中心に見える緑色のしべ、くすみ感のある花色など、従来のものとはひと味違うバラが近年人気を集めています。そんな個性豊かなバラを次々と世に送り出しているのが、静岡県菊川市にある「やぎバラ育種農園」です。バラの生産量国内第2位を誇る静岡県は県内にバラ産地が点在していますが、菊川市もそのひとつ。

二代目農園主の八木勇人さんは、周囲に茶畑が広がる3000坪の敷地で、年間約30〜40種類のバラを栽培しています。

育てていて楽しく、ワクワクするバラが理想

ハウスの中に足を踏み入れると、今まで見たことのない色や形のバラが目に飛び込んできました。八木さんは国内のバラの生産農家では珍しくバラの育種(品種改良)を行っており、なんと栽培しているすべてのバラがオリジナル品種とのこと。

今から18年前に初めて誕生したオリジナル品種で、八木さん自身もいちばん好きだというヤギグリーン、華やかな香りとライラックピンクの花色が魅力のカレン、貝を思わせるやわらかなベージュ色のシュエルヴァーズ。手塩にかけて育てたバラたちはどれも美しくユニークで、ずっと眺めていても飽きることがありません。

 「やぎバラ育種農園」ではこうしたオリジナル品種のバラを総称し、「Art Rose. (アールローズ/芸術のバラ)」と名付けました。「生産性はもちろんですが、作っていておもしろいな、ワクワクするなと思えるバラが理想。我々のバラを手にするお客さまにも、ぜひ1本1本の花の個性を楽しんでいただきたいですね」と八木さん。オリジナリティあふれるバラの姿に、八木さんのこうした想いが映されているようです。

1万粒の中から将来有望な新品種を見極めて

取材中、あるハウスの中に小さなバラの苗木が並んでいるのが目に止まりました。この場所こそが、八木さんの夢と努力が詰まった育種専用のハウスなのです。
「毎年1万粒のバラの種をまき、その中から生産性はどうか、耐病性はあるかなどを見極め、5年ほどかけてふるいにかけていきます。最終的に新品種として残るのは2~3品種で、8割以上は世の中に出ることはありません。だからでしょうか、毎日が宝探し気分なんですよ」。

せっかく日本で育種しているのだから土地の気候に合わせたバラをと、ここ数年は日本の夏の厳しい暑さにも耐えられる品種にも力を入れているそう。次に誕生するのはどんなバラか、期待が高まりますね。

圃場でギリギリまでじっくりと咲かせるのも八木さんのこだわり。これまでにない色、形、花姿のバラを手元に届いた瞬間から最高の状態で楽しめるのも魅力です。

ハーブや花木と組み合わせて春らしく

バラはグリーンとの相性がいいので、葉や枝と合わせると魅力がより引き立ちます。おすすめはゼラニウムやアフリカンバジル、ミントといった、やわらかく春らしい雰囲気の出るハーブ。またユキヤナギ、コデマリ、桜、コブシなど春ならではの花木とも相性抜群です。もちろん、他の春の花と組み合わせても。その際はスイートピーやパンジー、クリスマスローズなど、シックなニュアンスカラーの花を選ぶと、トーンがマッチして素敵です。

茎の長さに応じて花器にも変化を

水をよく吸うバラは多めの水に活けるのが基本。その際、水に浸かる部分の葉は取り除くようにしましょう。エアコンの風や直射日光が直接あたる場所は避け、なるべく涼しい場所に飾ったら、こまめに(できれば毎日)水替えを。なお、水替え時には毎回茎を数センチずつ切り戻していきます。繰り返すうちに茎が短くなっていきますので、花器は花瓶⇒カップ⇒お皿と徐々に変えていくのがおすすめです。

協力: OZmagazine[スターツ出版(株)]