Flower+1<お花のふるさとと知られざる魅力>
VOL.6 東京・清瀬「横山園芸」の花弁のきらめきダイヤモンドリリー
「幻の花」を訪ねて、東京都清瀬市へ
ダイヤモンドリリーという花をご存知でしょうか。
秋も深まった頃、透んだ日差しを浴びて宝石のようにキラキラと輝きを放つこの花は、ヒガンバナ科の球根植物で、ネリネ(学名)とも呼ばれています。あまり馴染みがないという人も多いと思いますが、それもそのはず。開花時期が限られているうえ、栽培管理と増殖に長期間を要するため、日本で手がけている園芸家は数えるほどしかしないのです。
日本におけるダイヤモンドリリー栽培の第一人者
その数少ない園芸家の一人が、東京都清瀬市で横山園芸を営む横山直樹さんです。埼玉県との境に位置する清瀬市は、武蔵野台地を流れる河川に挟まれ、古くから農業が盛ん。横山園芸はここで15代にわたって農業を営んでおり、横山さんの父親の代からは花卉の栽培を手がけています。「横山園芸としてダイヤモンドリリーの生産を始めたのは1960年代。父が種苗会社から球根を託されたことがきっかけです。2001年に私が就農して以来、品種改良と維持を続け、現在は500〜600品種を育てています」と横山さん。
取材で圃場を訪れたのは夏の終わり頃。ハウスの中には、今年開花予定の球根の鉢がずらりと並んでいました。その数、なんと約5万球。それを毎年4分の1ずつ植え替えているのだそうです。
美しい輝きを守るため、独自に研究を重ねました
「ダイヤモンドリリーの魅力はなんといっても、一度見ると忘れられない美しい輝きです」と話す横山さん。その秘密は、花弁の表皮細胞が不規則な形をしているため。そこに光が当たり乱反射することによって、ダイヤモンドのような輝きを放つのだそうです。
「ハウスに朝日や夕日が差し込むとまぶしいくらいに輝いて、本当にきれいですよ。」見る人を一瞬で虜にする美しさを持つ一方で、ダイヤモンドリリーは栽培管理に手間がかかることで知られています。球根を植えてから花が咲くまで6〜7年かかるうえ、ひとつの球根に咲く花は毎年たったの1本。しかも開花時期は10月下旬からの3週間のみです。
いわば「幻の花」ともいえるダイヤモンドリリーですが、横山さんはその美しさを多くの人に知ってもらいたいと、自生地である南アフリカに赴くなどして、研究を重ねました。その結果、独自の栽培技術を編み出したのです。
ダイヤモンドリリーを生まれ故郷で咲かせるのが夢
長年にわたる試行錯誤の末、質のいい大輪のダイヤモンドリリーの生産に成功した横山さん。開花調整をすることで、出荷期間も10月初旬から11月中下旬までと、倍以上に延びました。近年はフラワーショップの店頭でダイヤモンドリリーを目にする機会も増え、その魅力や価値が少しずつ広まっているのを感じます。
横山さんの次の目標は、ダイヤモンドリリーを故郷の南アフリカに返すこと。実は南アフリカでは、大航海時代にダイヤモンドリリーの球根が大量に掘られてしまい、今ではほとんど残っていないのだとか。「現地の人にもぜひこの美しさを知ってもらわないといけない。それがこの花を少なからず生業にしている私の使命だと思うんです」。
横山さんの熱い挑戦は、まだまだ続きます。
いろいろな場所に置いて、輝きの違いを楽しんで
ダイヤモンドリリーといえばなんと言っても、ラメを振りかけたようにキラキラと輝く花びら。輝き方は光の当たり具合で変化するので、窓辺や照明の下など、いろいろな場所に置いて楽しんでみてください。
一方、すっと伸びた長い茎も特徴のひとつ。口の狭い一輪挿しや試験管を並べたような花器に活けると、花本来の魅力がぐっと引き立ちます。合わせる花や葉ものは、小ぶりで軽やかさのあるものがおすすめです。
こまめなお手入れをすれば半月ほど長持ちします
秋が深まった頃に出回ることも手伝い、日持ちするのもダイヤモンドリリーの魅力のひとつ。こまめに水替えと切り戻しをすれば、長く楽しめます。
外の世界がセピア色に移り変わる季節に、美しい花色と輝きで室内が明るくなるのはうれしいですね。長く飾っていると花粉が熟して落ちてしまうこともあるので、気になる場合は早めに取り除くといいでしょう。
協力: OZmagazine[スターツ出版(株)]