FLOWER+1<お花のふるさとと知られざる魅力>

VOL.12 和歌山「宮本園芸」のニュアンスカラーのスターチス

潮風が気持ちいい、日本有数のスターチスの産地へ

海沿いの道を車で走っていると、青い海を背景にいくつものビニールハウスが並んでいます。ここ和歌山県御坊市は、全国でも屈指のスターチスの産地。なかでも暖かい太陽とミネラル分を含んだ海風に恵まれた御坊市名田町はその中心で、ハウス群を貫くように走る市道は別名「名田フラワーロード線」とも呼ばれています。

宮本園芸はこの風光明媚な土地で、年間およそ60種類のスターチスを栽培。海まで徒歩5分のハウスには、さまざまな色合いの花がふんわりと咲き誇っていました。その多くがニュアンスカラーと呼ばれる、くすんだ中間色です。 

豊富な花色を誇る“おしゃれスターチス”の先駆け

宮本園芸の2代目・宮本一輝さんはスターチス界の若手ホープのひとり。

 

数多くの生産者の中で、宮本さんのスターチスが一目置かれているのにはいくつか理由があります。
そのひとつが、パステルカラーのパレットが作れそうなほどの豊富なカラーバリエーション。宮本さんのスターチスは、ひとことでオレンジ色と言っても、淡い山吹色の「オレンジライト」、くすんだレンガ色の「ブリックオレンジ」、ピンクがかった「レッドオレンジ」とさまざま。質感も多彩で、同系色のグラデーションでブーケを作ってもニュアンスがでます。「スターチスというとカサカサと乾いたイメージがあると思いますが、品種によってはしっとりしたものもあるんです。ちょっといいタオルみたいに、思わず頬ずりしたくなるような」と宮本さん。
一方で、枝ぶりのしなやかさも魅力のひとつ。「絞り上げた細マッチョのようなスターチスを目指しています(笑)」と宮本さんが話すように、1本1本の花茎は細く華奢。ですが、細かく枝分かれしているため、ふんわりとしたボリュームが出るのです。ハウスに足を踏み入れたときに、春色の綿菓子に包まれているような気持ちになったのはそのためかもしれません。 

美しいニュアンスカラーの秘密はきめ細やかな栽培管理

繊細なニュアンスカラーと、やわらかなボリューム感。これまで仏花のイメージが強かったスターチスの印象を一変する宮本さんのスターチスは、どのように栽培されているのでしょうか。
「くすみ感のあるニュアンスカラーをきれいに出すために、肥料や水やり、温度管理は自分なりに研究し、工夫しています。特に肥料は必要最小限にしていますね。人間もあんまり栄養を与えすぎるとメタボになるじゃないですか。花も同じで、なるべく自然に近い健康的な状態を保つことで、きれいで輸送にも耐えられる丈夫な花が育つんです」。

そう、宮本さんのスターチスはとにかく長持ち。また花瓶に入れたままの状態できれいなドライになるので、吊るす手間がかからないのも魅力です。「わかる方にはわかると思うのですが、〝立ったまま死んでいくラオウのような花〟と呼んでいます(笑)。タフなので、お手入れも簡単です。ぜひ気軽に暮らしに取り入れてみてください」

フレッシュな質感を楽しんだあとはスワッグやリースに

宮本園芸のスターチスは質感の多彩さも特徴。洗いたてのタオルのようにふんわり柔らかな手ざわりの「ミルキーウェイ」、ステンドグラスのような透明感のある「アンティークモーヴ」など、フレッシュならではの質感や色合いが魅力です。
しばらくフレッシュな状態で飾ったら、スワッグやリースに仕立てて、ドライフラワーとして楽しんでみてはいかがでしょうか。スワッグは花で面を作るように束ねるだけ。リースも蔓などで作られたベースに花をワイヤーで固定すれば、簡単に作ることができます。

風通しのいい場所に飾れば、さらに長持ち

もともと丈夫で長持ちするスターチス。特別なお手入れは必要ありませんが、湿度の変化によっては額の部分が裂けたり、カビが生えやすくなることも。
少しずつ気温が上がってくるこの季節は、花瓶の水は少なめにし、また水に浸かる部分の葉とひらひらとした額の部分は取り除くようにしましょう。ドライフラワーにする際も、風通しのよい乾燥した場所に置くとカビの発生を防ぐことができます。

協力: OZmagazine[スターツ出版(株)]