FLOWER+1<お花のふるさとと知られざる魅力>

VOL.9「船穂 晴れの国岡山」の染めスイートピー

陽当たりのいい山の斜面ですくすくと育っています

小高い山の頂に登ると、ビニールハウスの屋根越しにキラキラと光る瀬戸内海が。「いい景色でしょう」。JA晴れの国岡山の平松敬一さんが、そう言って目を細めます。ここは岡山県倉敷市船穂町地区。温暖な天候と高梁川の良質な水に恵まれたこの地は、古くから全国でも有数のスイートピーの産地として知られています。「船穂のスイートピー栽培は、特産のマスカットの裏作として始まりました。ハウスが傾斜地にあり日当たりがよいため、いい花が育つと言われているんですよ」と平松さん。山の斜面にずらりと並ぶハウスは、この地域ならではの光景です。

きれいな花を届けたいと、独自の出荷基準を設置

ハウスの中に入ると、甘くやさしい香りが鼻をくすぐります。蝶のような花姿も可憐で、思わず見とれてしまいますが、その華やかさは日々のこまめな手入れの賜物だとか。「蔓性植物のため整枝や脇芽の管理は欠かせません。また採花は1本ずつ手作業で行うのもこの地域の伝統なんですよ」。そう話すのは、JA晴れの国岡山船穂町花き部会の北村明成さんです。現在、花き部会には会長の北村さん、会社員から花農家に転向した目黒裕樹さんのほか、16戸の農家が所属。茎の長さや花の輪数など独自の出荷基準を設け、よりよい花を届けるべく技術を磨いています。

シックな色合いの染めスイートピーにも注目

花き部会では確かな品質を大切にする一方で、近年は専用液で花弁を染めたスイートピーにも力を注いでいます。なかでも北村さんが染める花は、くすみピンクやブルー、パープルといったアンティークな色合いが評判です。「くすみカラーのバラに合わせられるようなスイートピーを作りたいと、色合いを工夫しました。天候や気温、湿度で花弁の吸い上げ具合が変わるので、経験と勘が必要ですが、うまく染め上がったときはやっぱりうれしいですね」。染料によって浮かび上がる花脈やシックな色合いは、まるでアートのような繊細な美しさ。帰り際にいただいたニュアンスカラーの花束に、この花の新しい魅力を見つけた気がしました。

 ドライフラワーや押し花にするのもおすすめです

今回お届けするのは、アンティークカラーの染めスイートピー。花にボリュームがあるので、そのまま飾るだけでも華やかですが、届いたばかりなら茎の長さを活かした一輪挿しもおすすめです。またドライにしやすいのもスイートピーの特徴の一つ。早めに水から揚げて押し花にすれば、美しい色合いと花姿を長く楽しむことができます。

涼しい場所に飾ると長持ちします

切り花の中でも特に日持ちがよく、扱いやすいのもスイートピーの魅力。玄関や洗面所など涼しい場所に飾ると、お花が長く楽しめます。染色したスイートピーの場合は、茎の先から染料が流れ出ることもあるので、水替えはできるだけこまめに。また洋服などに染料がつかないように気をつけましょう。

協力: OZmagazine[スターツ出版(株)]